液体の分析
分子構造解析(核磁気共鳴装置=NMR, 質量分析装置=MS)
有機あるいは高分子を適当な溶剤に溶かして液体とし、核磁気共鳴装置=NMRや質量分析装置=MSを用いて、分子構造を調べることが出来ます。NMRやMSは有機化学の研究者にとって不可欠であり、年間の利用率が最も高い装置となっています。
固体の分析
均一化し易い気体、液体の分析では全体の平均的濃度を調べることになりますが、固体では局所的に特定の元素が分布することは当たり前で、むしろ、均一化する場合の方が稀であると言っても過言ではありません。
また、固体の場合、塊状、粉末、薄膜など試料の形態は様々で、例えば、これらの平均的な濃度が欲しいのか、あるいは内部の特定の部位での濃度が知りたいのか、表面の情報だけでよいのか、はたまた塊状試料の局所的微小領域のみの情報で良いのかによっても、分析方法も様々変化します。 比較的大きな塊状においてs濃度分布の様子が 何処をとってもほとんど同じであれば、塊状試料を切断して得られる表面から濃度分布を測定することができます。
X線を利用した元素分析装置(電子線プローブ顕微鏡=EPMAや蛍光X線分析装置など)の場合には検量線法やZAF法など適当な濃度算出法がありますが、基板上に薄く蒸着された薄膜の成分分析、あるいは直径1μm以下の針状物質の濃度分析などではZAF法を試料形態に合わせて補正する必要があります。
補正は膜厚、物質の組み合わせなど様々な要因で異なってきますので、簡単に定量分析に応用できるわけではありません。補正係数が分かっている特定の物質の組み合わせであれば正確な定量分析も可能となります。
以下は固体試料の形状と何が知りたいか(何の分析を行うのか)別に使用可能な装置の例を示します。
表面観察 (実体顕微鏡 光学顕微鏡 デジタル顕微鏡 SEM FE-SEM) |
試料形状 |
観察場所 |
分析内容 |
利用可能な機器 |
塊状
・
粒
・
薄膜 |
表面
・
断面 |
表面観察 |
実体顕微鏡(数倍-20倍) 光学顕微鏡(50-400倍)
デジタル顕微鏡(数倍-5000倍) SEM(数10-数万倍)
FE-SEM(数10-50万倍) |
凹凸の定量 |
3D-SEM デジタル顕微鏡 表面荒さ計 |
原子間力顕微鏡=AFMスキャニングプローブ顕微鏡=SPM
3D-SEM (精密測定可) |
膜厚測定 |
膜厚計 |
特殊微小部位
例)針状 |
断面 |
断面加工 |
FIB (nmオーダーでの微細加工) |
断面観察 |
FIB(イオン像) |
|
元素分析(SEM+EDS FE-SEM+EDS EPMA XRF) |
試料
形状 |
測定場所 |
分析内容 |
利用可能な機器 |
塊状 |
表面 |
定量 |
EDS+SEM EDS+FE-SEM EDS+3D-SEM EPMA 精度が落ちる |
断面・表面 |
定量 |
EDS+SEM EDS+FE-SEM EDS+3D-SEM EPMA 鏡面が望ましい |
粒状 |
表面 |
定量 |
EDS+SEM EDS+FE-SEM EDS+3D-SEM EPMA XRF
精度が落ちる |
微粉末 |
半定量 |
XRF 粉末を固化 or ガラス化 標準試料による定量も可 |
基板上の
薄膜 |
|
厚さ
5μ
以上 |
表面 |
定量 |
EDS+SEM EDS+FE-SEM EDS+3D-SEM EPMA XPS=ESCA AES |
5μm
以下 |
半定量 |
EDS+3D-SEM EPMA XPS=ESCA AES (膜厚補正が必要) |
1μm
以下 |
定性・
半定量 |
XPS=ESCA(分析領域:10mm×10mm or φ10μm=微小部XPS)
AES=オージェ電子顕微鏡(分析領域:φ1μm以下が可能) |
薄膜
単体 |
内部 |
半定量・
定量 |
EDS+TEM
(化学的研磨、イオンミリング、FIBなどによる薄膜化が必要) |
|
結晶構造解析(未知物質の特定)(XRD TEM) |
試料形状 |
測定場所 |
測定法 |
利用可能な機器 |
塊状 |
表面 |
高温 |
XRD(X線回折) |
高温炉(オプションあり)
微小部(オプションあり)
薄膜法(オプションあり) |
粒状・粉末 |
微小部 |
基板上の薄膜 |
薄膜 |
微粉末 |
内部 |
電子線回折 |
TEM |
薄膜 |
|
未知物質の特定(FT-IR 顕微FT-IR) |
試料形状 |
測定場所 |
測定法 |
利用可能な機器 |
板状 |
表面 |
反射法 |
FT-IR 顕微FT-IR (ただし、データベースと比較可能であること) |
内部 |
透過法 |
FT-IR 顕微FT-IR (ただし透過性物質に限る) |
|
内部欠陥検査(TEM) |
塊状 |
内部 |
表面近傍 |
X線透過装置(内部) |
薄膜 |
|
TEM(膜厚0.1μm以下) |
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その他の機器による固体分析(単結晶自動X線構造解析装置、ESR、SQUID、ZEM-1、BET、光散乱計、レーザーフラッシュ熱拡散係数測定装置) |
試料形状 |
サイズ |
分析内容 |
装置名 |
粒 |
φ1mm程度 |
単結晶の分子・結晶構造 |
単結晶自動X線構造解析装置 |
円柱、角柱 |
3×4×20mm以内 |
熱物性(ゼーベック係数) |
ZEM -1 |
円柱、角柱 |
電気抵抗温度依存性 |
粉末 |
|
比表面積 |
BET |
懸濁液 |
|
粒度分布 |
光散乱計 |
懸濁液 |
ゼータ電位 |
円板 |
φ10mm×3-5mm |
熱伝導率 |
レーザーフラッシュ熱拡散係数
測定装置 |
固・液・気体 |
液体は専用セル |
電子・原子の状態分析 |
電子スピン共鳴装置=ESR |
固体 |
|
精密磁気特性 |
SQUID |
塊・粒・円柱状 |
5mm程度 |
炭素・硫黄の
定量分析装置 |
炭素・硫黄分析装置 |
固体 |
2mg程度 |
有機元素の定量分析 |
CHNコーダー |
固体 |
平滑面 |
硬さ |
超微小硬さ計 |
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